Samba

曖昧さ回避 この項目では、ソフトウェアについて説明しています。その他の用法については「サンバ」をご覧ください。
Samba
開発元 The Samba Team
初版 1992年 (32年前) (1992)
最新版 4.20.1[1] ウィキデータを編集 - 8 5月 2024 [±]
リポジトリ
  • git.samba.org
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対応OS クロスプラットホーム
種別 リモートアクセス
ライセンス GPL v3
公式サイト www.samba.org ウィキデータを編集
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Samba (サンバ) は、マイクロソフトWindowsネットワークを実装したフリーソフトウェアLinuxSolarisBSDmacOSなどのUnix系オペレーティングシステム (OS) を用いて、Windowsファイルサーバプリントサービス、ドメインコントローラ機能、ドメイン参加機能を提供する。

1992年アンドリュー・トリジェルによって最初のバージョンが開発され、後にGPL v2にて公開された。 3.2系からはGPL v3へ移行した。

特長

Sambaは12のサービスと12の通信プロトコルの実装で、CIFSNetBIOS over TCP/IP (NetBT)、SMB/CIFS、DCE/RPCのほか、MSRPC、NetBIOSネームサーバ (NBNS) として知られるWINS サーバ、NT ドメインログオンを含めた NT ドメインプロトコルスイート、セキュアアカウントマネージャ (SAM) データベース、ローカルセキュリティ認証 (LSA) サービス、NTプリントサービス (SPOOLSS)、そしてバージョン3では(ケルベロス認証LDAPに対応した) Active Directoryへのドメイン参加機能が含まれている(AD参加機能によってUNIX/Linux上でのユーザ管理が不要になる)。

大雑把には、UNIX機をクライアントあるいは共有ファイルサーバとしてWindowsネットワークへ参加させる機能の他、Windows NT 4.0サーバの機能と、バージョン3では一部Windows 2000 / 2003サーバの機能を持つ(例えば、VSS:ボリュームシャドウコピー機能など)。本家のWindows Serverと異なり、本体価格やサーバに接続するクライアント分のライセンス[2]コストなどが一切不要であることや、アクセス権の指定など一部機能は本家を上回る部分もあるため、官公庁、大学、大企業を中心にSambaを導入する例も増えている。また、Mac OS X v10.6.8まではSambaの機能によって、Windowsネットワーク環境でのファイル共有やドメイン参加を実現していた[3]が、Mac OS X Lionからは取り去られて独自実装のsmbdに置き換えられている[4]

名前の由来

Sambaという名前は、Windowsで使用されているネットワークファイルシステム「SMB (Server Message Block)」に、2つの母音を入れて作られている。Sambaはもともと「smbserver」と呼ばれていたが、SMBserverの商標をもつSyntax[5]から登録商標であるとの通告があったため、名前が変更された。S, M, B が含まれる単語を探し、Samba が選ばれた。次点の名前は、salmonberry であった[6]

主な機能

ファイルサーバ

共有フォルダと呼ばれるサーバ側の空間に、ファイルを格納する機能。NASとしての機能を果たす。

アクセス権を設定できるため、特定のユーザに同じファイルを提供するといった用途が実現できる。 ACLをサポートする環境なら、ユーザやグループ毎に細かくアクセス権を指定することも可能。 Windowsサーバと比べて、「$」で終わる共有名でなくても隠し共有にできる利点がある。(隠し共有…共有名の検索やリストアップを行っても画面に現れないが、正しい名前を指定すればアクセスできる共有フォルダ)

プリントサーバ

Windowsクライアント向けのプリントサーバ機能。

共有プリンターの提供やプリンタドライバの配布を行う。

Windowsドメインコントローラ

Windows NT 4.0サーバで提供される機能で、NT ドメインと呼ばれるネットワーク領域内で、ユーザやクライアントコンピュータの管理を行う機能。Samba 2.2から提供された。

ユーザアカウントやコンピュータアカウント、アクセス権などの情報を中央集権的に管理し、ユーザ認証やシングルサインオンなどのサービスを提供する。

プライマリドメインコントローラ (PDC)
ユーザアカウントやコンピュータアカウントなどの、データの原本を持つコンピュータ。
バックアップドメインコントローラ (BDC)
PDCのデータのコピーを持つコンピュータ。
ドメインメンバ
PDC の認証を受けたコンピュータや、そのコンピュータを利用するユーザ。

ドメインメンバ(利用者側)からは、PDCとBDCは同じ機能を提供しているように見える。 BDCはバックアップの機能を提供しているため、ドメイン内に存在しなくても構わない。同じドメイン内にPDCとBDCが両方存在している場合、ドメインメンバは原則としてBDCにサービスの提供を依頼する。

Samba はPDC / BDCの機能を提供することができ、NT ドメイン内にメンバとして参加することもできる。ただし、WindowsサーバとSambaではアカウント情報の同期の取り方が異なるため、同じドメイン内でWindowsサーバのPDCとSambaのBDCを運用すること、或いはその逆はできない。(なおバージョン3からユーザやグループなどの属性を保持したまま、NT 4.0ドメインからSambaドメインへの移行がサポートされた。)

Active Directory ドメインメンバ

Windows 2000サーバ以降から提供されるActive Directoryドメインへのドメインメンバとしての参加機能。Samba 3から提供された。

Active Directoryは前述のNT ドメインに代わるもので、既存のネットワーク技術を応用して構成されている。ユーザアカウントなどの管理情報をLDAPディレクトリサービスに格納し、認証機構にケルベロス名前解決DNS、管理情報の配布やコピーにTCP/IPのみを使用する。

Active Directory ドメインコントローラー

2012年12月にリリースされたSamba 4よりActive Directoryドメインのドメインコントローラー機能がサポートされている。

smbclient

UNIX側からWindowsSambaの共有フォルダに接続するためのクライアントソフトウェア

標準的なコマンドラインプログラムFTPのような操作で、共有フォルダに接続し、ファイルを操作することができる。

libnss_wins

Name Service SwitchへWINSサーバーと137/udpのブロードキャストを使ったホスト名解決を行うライブラリの提供。

バージョン履歴

Samba 3.0までの歩みは「Sambaの10年」を参照。

リリース日 バージョン メンテナンス期限(EOL)[7] 概要
000000002003-09-25-00002003年9月25日 サポート終了:3.0 000000002009-08-05-00002009年8月5日 SambaをActive Directoryドメインメンバにして、Windows Active Directoryドメインに参加できる。Unicodeサポート[8]
000000002004-09-25-00002004年9月25日 サポート終了:3.1 N/A 3.2に向けての開発ブランチ[9]
000000002008-07-01-00002008年7月1日 サポート終了:3.2 000000002010-03-01-00002010年3月1日 GPL2からGPL3にライセンス変更。IPv6のサポート。ファイルサービスの従来の最大1,024バイトというパス名、および最大256バイトのファイル名という制約がなくなり、ホストOSで設定した値までの文字列が扱えるようになった[10]
000000002009-01-27-00002009年1月27日 サポート終了:3.3 000000002011-08-09-00002011年8月9日 クラスタサポートや管理ツールが強化[11]
000000002009-07-03-00002009年7月3日 サポート終了:3.4 000000002012-12-11-00002012年12月11日 Samba 3とSamba 4ソースコードの両方を含む最初のリリース。デフォルトではSamba 4のビルドは無効[12]
000000002010-03-01-00002010年3月1日 サポート終了:3.5 000000002013-10-11-00002013年10月11日 SMB2の実験的サポートを含む最初のリリース[13]
000000002011-08-09-00002011年8月9日 サポート終了:3.6 000000002015-03-04-00002015年3月4日 SMB2を完全にサポートする最初のブランチ[14]
000000002012-12-11-00002012年12月11日 サポート終了:4.0 000000002015-09-08-00002015年9月8日 SMB2.1のサポート。SambaをActive Directoryドメインコントローラにして、Windows Active Directoryドメインに完全に参加できる[15] [16]
000000002013-10-11-00002013年10月11日 サポート終了:4.1 000000002016-03-22-00002016年3月22日 SMB3のサポート[17]
000000002015-03-04-00002015年3月4日 サポート終了:4.2 000000002016-09-07-00002016年9月7日 Btrfsベースのファイル圧縮、スナップショット、 winbind統合[18]
000000002015-09-08-00002015年9月8日 サポート終了:4.3 000000002017-03-07-00002017年3月7日 新しいロギング機能、SMB3.1.1のサポート[19]
000000002016-03-22-00002016年3月22日 サポート終了:4.4 000000002017-09-21-00002017年9月21日 非同期フラッシュリクエスト[20]
000000002016-09-07-00002016年9月7日 サポート終了:4.5 000000002018-03-13-00002018年3月13日 NTLMv1が既定で無効に、バーチャルリストビュー(VLV)、さまざまなパフォーマンス改善[21]
000000002017-03-07-00002017年3月7日 サポート終了:4.6 000000002018-09-13-00002018年9月13日 マルチプロセスNetlogonのサポート[22]
000000002017-09-20-00002017年9月20日 サポート終了:4.7 000000002019-03-19-00002019年3月19日 Samba ADとMIT Kerberos[23]
000000002018-03-13-00002018年3月13日 サポート終了:4.8 000000002019-09-17-00002019年9月17日 [24]
000000002018-09-13-00002018年9月13日 サポート終了:4.9 000000002020-03-03-00002020年3月3日 [25]
000000002019-03-19-00002019年3月19日 サポート終了:4.10 000000002020-09-22-00002020年9月22日 Python 3のフルサポート。preforkプロセスモデルの改良[26]
000000002019-09-17-00002019年9月17日 サポート終了:4.11 000000002021-03-09-00002021年3月9日 SMB1が既定で無効に[27]
000000002020-03-03-00002020年3月3日 サポート終了:4.12 000000002021-09-20-00002021年9月20日 [28]
000000002020-09-22-00002020年9月22日 サポート終了:4.13 000000002022-03-21-00002022年3月21日 Python3.6以降が必要[29]
000000002021-03-09-00002021年3月9日 サポート終了:4.14 000000002022-09-13-00002022年9月13日 新VFSインターフェースの導入[30]
000000002021-09-20-00002021年9月20日 サポート終了:4.15 000000002023-03-08-00002023年3月8日 新VFS。server multi channel supportが既定で有効に[31]
000000002022-03-21-00002022年3月21日 サポート中:4.16 ~2023年9月 samba-dcerpcdの導入。証明書の自動登録。[32]
000000002022-09-13-00002022年9月13日 サポート中:4.17 ~2024年3月 SMB1プロトコル無しで構成可能。RBCD(リソースに基づくドメイン間の制約付き委任)をサポート。DNSリスニングポートがカスタマイズ可能。[33]
000000002023-03-08-00002023年3月8日 現行バージョン:4.18 ~2024年9月 SMBサーバーのパフォーマンス向上。samba-toolのメッセージ機能を更新。新しいwbinfoオプション。[34]
凡例
サポート終了
サポート中
現行バージョン
最新プレビュー版
将来のリリース

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ “[Announce Samba 4.20.1 Available for Download]” (8 5月 2024). 8 5月 2024閲覧。
  2. ^ Client Access Licenseのことである
  3. ^ OS X 10.5における設定(アップル)
  4. ^ Sambaを取り去ったOS X Lion、その影響は……
  5. ^ TotalNET Advanced Serverという製品などを販売している。
  6. ^ GLYN MOODY 小山祐司監訳『ソースコードの反逆』株式会社アスキー、2002年6月11日、329頁。 
  7. ^ “Samba Release Planning”. wiki.samba.org. 2023年4月29日閲覧。
  8. ^ “The first stable release of Samba 3.0 is available”. 2020年3月7日閲覧。
  9. ^ “Samba 3.1.0 Available for Download”. 2020年3月7日閲覧。
  10. ^ “Samba 3.2.0 Available for Download”. 2020年3月7日閲覧。
  11. ^ “Samba 3.3.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  12. ^ “Samba 3.4.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  13. ^ “Samba 3.5.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  14. ^ “Samba 3.6.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  15. ^ “Samba 4.0.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  16. ^ “Samba - opening windows to a wider world”. 2018年3月17日閲覧。
  17. ^ “Samba 4.1.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  18. ^ “Samba 4.2.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  19. ^ “Samba 4.3.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  20. ^ “Samba 4.4.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  21. ^ “Samba 4.5.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  22. ^ “Samba 4.6.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  23. ^ “Samba 4.7.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  24. ^ “Samba 4.8.0 Available for Download”. 2018年3月17日閲覧。
  25. ^ “Samba 4.9.0 Available for Download”. 2018年9月20日閲覧。
  26. ^ “Samba 4.10.0 Available for Download”. 2019年4月14日閲覧。
  27. ^ “Samba 4.11.0 - Release Notes”. samba.org. 2019年10月25日閲覧。
  28. ^ “Samba 4.12.0 - Release Notes”. samba.org. 2020年3月7日閲覧。
  29. ^ “Samba 4.13.0 - Release Notes”. samba.org. 2021年10月6日閲覧。
  30. ^ “Samba 4.14.0 - Release Notes”. samba.org. 2021年10月6日閲覧。
  31. ^ “Samba 4.15.0 - Release Notes”. samba.org. 2021年10月6日閲覧。
  32. ^ “Samba 4.16.0 - Release Notes”. samba.org. 2022年4月26日閲覧。
  33. ^ “Samba 4.17.0 - Release Notes”. samba.org. 2023年4月29日閲覧。
  34. ^ “Samba 4.18.0 - Release Notes”. samba.org. 2023年4月29日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • 公式ウェブサイト
  • 日本Sambaユーザ会